2020年の春以降、小売業における変化の速さは、世界が記憶しているところです。かつてない速さで 生活必需品を店舗に補充する必要が生じ、これには並外れた努力とチームワークが必要となりました。小売業者は、安全な店内環境を構築したり、接客業務に関わらない従業員を在宅勤務に移行させたり、より一層デジタル化したアプローチを通じてお客様とコミュニケーションを取り、サービスを提供する方法を導入したりと、迅速な業務変革を実行しました。
多くの小売業者は回復に向かっていますが、一方で従業員不足やサプライチェーンの課題などの新たな障害が浮上しています。これらの課題に対応するには、新しい考え方が必要です。そこを掘り下げる前にまず、小売業者が回復のために何をしてきたかを見てみましょう。
2021年初頭に発表されたEuromonitorの報告によると、小売業者の93%が、パンデミックは自社のデジタル化計画を1年以上前倒ししたと述べました。このデジタル化の進展には大きなメリットがありました。パンデミックの前あるいは最中にデジタルトランスフォーメーションの取り組みを加速し、その過程でデジタル成熟度を高めていた小売業者は今、取り組みを進めようとしている他の小売業者よりも迅速に適応し、新たな障害に対応し、パフォーマンスを向上させる可能性が高くなっています。
これは驚くことではありません。今年初めに#NRF2021に参加した時私たちは、小売業者が過去1年間に達成したことに勇気づけられ、先行きを楽観的に感じました。このイベントの私なりの要約として、私は、小売業者が業界を再活性化の方向に進める方法として3つの行動を提言しました。
小売業者は上記の3つの戦略で発展を続けてきましたが、サプライチェーンの分断や、雇用可能な人材の不足など、ビジネス環境における新たに変化する問題に今でも直面しています。これらの障害は、小売業者の収益や利益の回復を妨げる恐れがあります。消費者の新しい購買行動を把握する方法を見い出すのに加えて、小売業者はこれらの新たな問題を軽減する方法も並行して見つけ出さなければなりません。
「世界中の航空会社やレストラン、ホテルで求人を埋められず、復活した消費者の需要を収益化する取り組みの妨げとなっています。パンデミック下で離職した多くの労働者は、まだ造船所や工場、建設現場に戻っておらず、生産に打撃を与え、プロジェクトを停滞させています。」
- ジュリア・ホロビッツ、CNN、2021年6月
小売業者の多くはこれまで、商品情報管理(PIM)技術を使用した商品データの管理を行い、データ管理の効率向上やデータの強化、商品データのプロセスや承認の視認性向上、物理チャネルやデジタルチャネルを通じた信頼できるデータの社内および消費者との共有など、様々なメリットを実現してきました。
しかし、データ要件が複雑化し、小売業者がより多くの商品属性や階層を管理し、その情報を正確かつ最新に保つ必要が生じるにつれ、限界に直面する可能性があります。商品、顧客、そしてロケーションに関するデータを混合する必要があるパーソナライゼーションの向上のような、前述の複雑な課題に小売業者が対応しようと望む場合、この限界は特に顕著になります。
所有するデータの能力を活用する新しい方法を模索する小売業者には、以下の機能を持つマスターデータ管理(MDM)が、そのニーズを満たす最適な手段となるでしょう。
商品データのガバナンスを導入した小売業者は、プロセスの所有権や、従うべき反復可能な規則の作成、データセット全体に対する標準の確立などを含むプロセスを定義しており、規制や、アクセシビリティおよびセキュリティ規則の順守に役立っています。
小売業者がデータの成熟度を高め、ITアーキテクチャーを簡素化するにつれて、この同じガバナンスを前述とは異なるタイプのデータに拡張することが重要になってきます。Stibo SystemsのマルチドメインMDMを使用すると、小売業者は単一の統合プラットフォーム上で、サプライヤー、ロケーション、従業員、およびアセットに関するデータに対して同様のガバナンスルールとプロセスを確立できるようになります。
様々なインサイト領域:異なるデータセットの共通部分で、重要な小売業のインサイトを明確化。
小売業者が業務効率のさらなる改善を実現するには、継続的で一貫したデータのガバナンスや管理、および実行が必要です。マルチドメインMDMの魅力的ながらあまり知られていない利点の1つは、一種類のデータでは得られない新しいインサイトを生成し、活用できることです。小売業の回復の妨げとなっている障害の克服に関連する、小売業者にとって重要ないくつかのインサイト(上の画像を参照)を見てみましょう。
店舗の従業員全員のスキルセットを正確に把握すると、対応範囲の潜在的なギャップを確認できます。例えば、従業員の33%が食品取扱いの資格を持ち、調理場で働くことが可能でも、カフェで働くために必要なトレーニングを完了した人員は15%しかいないというケースです。それが、需要が増加したときや、複数の従業員が同時に休暇を取っているときに、お客様に提供できるカフェでのサービスの潜在的な隙間となります。このようなトレーニングギャップを埋めることで、小売業者は事業の弾力性を構築し、継続的な従業員の成長をサポートできます。
従業員データは、ロケーションデータと組み合わせると、どの従業員が別の店舗で働く適性を持っているかの概要を管理者に示すこともできます。これにより従業員は、第二のロケーションで勤務時間を増やすことが可能になります。また、従業員不足が特定の店舗に影響を与えることを回避したり、予想される需要の急増に対応したりする高い柔軟性も提供します。
小売店のバックルームは、一日を通して納入業者が訪れて店舗への直接配達を行うなど、非常に慌ただしく、混乱が生じる可能性があります。セキュリティの確保、盗難防止、商品の品質維持を実行するために、商品受け取りの担当者は、サプライヤーから特定のロケーションへの配送を承認されているのは誰かを明確に理解していなければなりません。承認システムを利用すると、すべてのロケーションへの安全なアクセスを保証する堅固な運用プロセスを確実に実行できます。
お客様は、コミュニティをサポートする手段として、地元のサプライヤーからの購入を好みます。それは飲食品に関しては、商品がより新鮮で、しかも環境に与える影響が少ないことを意味します。商品サプライヤーのロケーションと店舗のロケーションを結びつけるデータは、小売業者に貴重なデータ基盤を提供し、地元の商品を販売促進するためのインストアマーケティングを活性化します。同時にお客様の登録店舗ロケーションに基づくWebサイトやアプリでの情報提供も可能になります。
これらは、マルチドメインMDMがデータの透明性を高め、小売業者がより多くの情報に基づいたデータ駆動型の意思決定を行って、人材不足やサプライチェーンの問題を克服するために有用な利用法のほんの一部です。マルチドメインMDMならではの特徴の詳細は、こちらをご覧ください。